日本古時計クラブ keiコレクション2


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  尺時計 (JAPANESE PILLAR CLOCK)

  日本において、江戸から明治の初めごろまで、不定時法に対応するべく時計師によって製作された時計を和時計と言います。日本人の生活スタイルに合わせて、その種類も豊富に存在し、大名が作らせた非常に豪勢で立派なものから、柱にちょこんと掛けて使う時計や携帯できる時計まで、様々な種類のものがあります。今回は、最も庶民的な和時計である”尺時計”をご紹介します。

  明治時代に改暦されるまで、日本では不定時法という時間基準が採用されていました。不定時法では、1日を昼と夜に分け、それぞれを6等分、1日を12分割します。このように分けた昼と夜の1時間(現在の約2時間)は、夏場は昼が夜よりも長く、冬場はその反対になります。和時計はさまざまなアプローチにより、昼と夜、また季節により刻々と変化する時間を見事に表現しています。

  和時計の不定時法の表現法には、大きく分けると2つアプローチがあります。一つは、文字盤に変化をもたせることで表現する方法、もう一つは、文字盤は1年を通じて同じ物を用い、その代わりに、時計の運針に緩急を持たせてることで表現する方法です。尺時計は前者の文字盤を変化させることで、不定時法を表現する時計に分類されます。


   各画像は拡大できます



 尺時計は錘の位置エネルギーを利用することで時刻を知らせる時計です。この時計は平均的な大きさの39cmであり、希に30cm以下のものがあります。
 
 尺時計の上部には、錘が一定のスピードで下降するように脱進機を備えた機械が収められています。また、下部は中空の箱状になっていて文字盤が取り付けられており、錘はそこを上下できるようになっています。なお、下の写真のように、針は錘に直接取り付けられています。

 和時計は西洋の時計と異なり、時計師の銘が時計にのこされていないのが一般的であり、またホールマークのようなものもないため製作年を一意に特定することが困難です。しかし、時計の形式から大まかな時代がわかります。初期の尺時計は棒テンプですが、この時計は円テンプであることから江戸の後期につくられたことがわかります。







 尺時計は文字盤を工夫することにより不定時法に対応するタイプの時計です。文字盤の工夫の仕方は、干支が可動式になっているタイプ(割駒式)や、あらかじ不定時法に対応した文字盤が用意されていてそれを付け替えるタイプ(節板式)、節板式で取り替えが必要な文字盤が1枚の板にまとめてかかれていて、取り替えが不必要なタイプ(波板式)があります。この尺時計は節板式に分類されます。 

 旧暦では、1年を季節の分かれ目ごとに24の季節(節気)にわけます。それぞれは、立春や夏至のような呼び名がついています。(このページの下の表を参照してください。)

 節板式の尺時計は各節気ごとに文字盤が用意されており、それを付け替えるようになっています。よって、24面の文字盤が必要になるわけですが、このページの下表の”昼の長さ”を参照していただきますと、24節気を表すには、13面の文字盤があれば良いことがわかります。結局は、7枚の節板で13面の文字盤があらわされており、24節気が表現できるようになっています。

 節板は紛失していることが多く、この尺時計では3枚の節板がなくなっています。左の写真は残っている4枚の節板を並べたものです。節板の上下の”六”が夕暮れ、真中の”六”が明け方を表しています。
 
 なお、六、五、四、九、八、七、六、五、四、九、八・・・といった繰り返しで時刻が表されますが、この理由はマカロニ・アンモナイトさんの特集”和−Time Rhythm 〜和時計の暮らし〜”でわかりやすく紹介されています。また、この特集自体が和時計及び不定時法の非常に面白い読み物となっていますので、ご一読されることをお勧めします。

 それぞれの文字盤の上部には、どの時期に用いる文字盤か目印が書かれています。このページ下の表の”節板の目印”がそれです。(この時計は同表の”板の番号”の1、6、7が欠けています。)

 写真中の”六”に注目すると、それより上が夜、下が昼を表しています。写真では、その”六”の位置がずれているのがわかります。右の節板にいくに従い、昼の時間が短くなっています。



 脱進機は冠形脱進機です。左の写真の上から2つめの柱に冠形の歯車が設置されており、テンプの旗(後に示すテンプの写真を参照してください)をはじいて、テンプを振幅させるとともに、錘が下降するタイミングを調整しています。

 この冠形の歯車の軸はムーブメントの表面プレートを貫いています。その貫かれた軸には写真右の蝶々の飾りが取り付けられており、テンプの振幅とともに冠形の歯車が回転し、蝶々も回転する仕組みになっています。地味な尺時計において、目を楽しませてくれる嬉しい仕掛けです。


 機械部分の前後からの写真です。機械の高さは約9cmです。

 テンプを取り外した状態で、大きな歯車に力を加えると小さな歯車は勢いよく回転します。その様子がごらんいただけます。こちらをクリック(約1MB)してください。



 上の写真はムーブメントをばらして並べたものです。尺時計の中には鳴り物のタイプがあります。錘が鳴り物の機械になっているタイプです。そのような尺時計は構成パーツが多いのですが、ベーシックな尺時計の構成パーツはそれほど多くありません。

 冠形脱進機はテンプの軸に2枚のパレットあるいはフラッグと呼ばれる突起があり、それを冠形の歯車(右下の写真の一番上の歯車、あるいは、上の写真の中央付近にある歯車。通常の時計のガンキに相当する)で弾き・停止させる形式になっています。そこにはレバー(アンクル)がなく、ガンキとテンプが直接作用する形になっています。

 テンプとガンキの作用の様子がごらんいただけます。こちらをクリック(約800KB)してください。ガンキの回転に伴い、蝶々の飾りも回転しています。



 尺時計には専用の鍵がついており、それをケース下の引出しに収めらることができるようになっています。

 このクラブを通じてさまざまな和時計を実際にみせて頂き、触らせていただく機会がありました。そのたびに、和時計っていいなぁと感動していました。しかし、この時計を手に入れることで、実際にムーブメントを分解するなどして、新たな魅力を発見することができました。現在では、和時計はさまざまな時計の中で最も興味のある分野となっています。


  作成日:2003.09.24 kei@nawcc131.org



月日 二十四節気 太陽黄経 (°) 昼の長さ 節板の目印 板の番号
01月06日 小寒 285 -5 六節五 1
01月20日 大寒 300 -4 六中四 2
02月04日 立春 315 -3 七節四 2
02月19日 雨水 330 -2 七中三 3
03月06日 啓蟄 345 -1 八節三 3
03月21日 春分 0 0 八中二 4
04月05日 清明 15 1 九節二 4
04月20日 穀雨 30 2 九中正 5
05月06日 立夏 45 3 十節正 5
05月21日 小満 60 4 十中十二 6
06月06日 芒種 75 5 十一節十二 6
06月22日 夏至 90 6 月中十一 7
07月07日 小暑 105 5 十一節十二 6
07月23日 大暑 120 4 十中十二 6
08月08日 立秋 135 3 十節正 5
08月23日 処暑 150 2 九中正 5
09月08日 白露 165 1 九節二 4
09月23日 秋分 180 0 八中二 4
10月09日 寒露 195 -1 八節三 3
10月24日 霜降 210 -2 七中三 3
11月08日 立冬 225 -3 七節四 2
11月23日 小雪 240 -4 六中四 2
12月07日 大雪 255 -5 六節五 1
12月22日 冬至 270 -6 月中五 1
                           (平成15年の標準時に基づく二十四節気)    


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